ベントグリーンを夏越しさせる9つのSTEP ~ 『STEP 0』

STEP 0 【総説】 

サマーディクラインのメカニズムと、9つのステップ

ベントグリーンを夏越しさせるためには、まず夏に落ち込む仕組みを理解し、年間計画を立てて生育ステージに合わせた対応をすることが必要になります。

ベントグラスの夏落ちのメカニズム

ベントグラスは、光合成で生産した炭水化物を使って、体の維持(呼吸)や生長を行います。
すなわち、ベントグラスが生き延び、新しい根や葉を作るためには、炭水化物が必要です。
生産された炭水化物のうち、呼吸や生長に使った余りは、貯蔵養分(非構造性炭水化物)として蓄積し、これが春秋の発根や萌芽の原動力になるとともに、一時的な炭水化物不足の時の備えになります。
ところが高温時には、光合成低下、呼吸増大、根の機能低下により、貯蔵養分が消費され、やがては炭水化物が欠乏して根や葉が維持できなくなり、芝が痩せ、ターフが薄くなって行きます。
そこに排水不良や病害などのストレスが加わると、さらに衰退が進みます。
これがベントグラスのサマーディクライン(夏場の落ち込み)のメカニズムです。

貯蔵養分(非構造性炭水化物)の季節変化

貯蔵養分(ベントグラスの場合はフルクタン)のレベルが、炭水化物収支の目安となります
● 夏に貯蔵養分が枯渇するシナリオBでは、夏に大きく落ち込むリスクが高く、秋の回復も遅い
● 貯蔵養分を残した状態で夏を越えるシナリオAでは、夏落ちのリスクが軽減されます

最悪のシナリオから脱出する、9つのステップ

落ち込みにつながるシナリオBを、夏越しが可能なシナリオAへと変える9つのステップは、季節とベントグラスの状態に応じて、次のようになります。
(番号は上図の矢印①~⑨に対応)

STEP 1 【早春】 「春の一山」:発根の促進と窒素による地上部刺激
STEP 2 【春】 「梅雨前に芝と土壌の若返り」:更新作業と施肥
STEP 3 【梅雨】 「衰退を防ぎ、夏に備える」:窒素と土壌のコントロール
STEP 4 【夏・シナリオA】 「夏と闘う」:光合成と根活性の維持
STEP 5 【夏・シナリオB】 「弱りきったベントを守る」:ストレス軽減とサプリメント
STEP 6 【初秋】 「すばやい回復を促す」:現状の見極めと対処
STEP 7 【秋】 「本格回復期」:光合成・生長促進と土壌改善
STEP 8 【晩秋】 「晩秋期施肥」:来年へ向けた養分貯蔵の促進
STEP 9 【冬】 「春を待つ」:ストレス耐性と葉色のアップ