新型コロナウイルスのゴルフコース管理への影響

この記事を書いた2020/3/31時点で、世界的流行・パンデミック状態にある新型コロナウイルスCOVID-19について、各国の状況は異なるものの、多くのゴルフ関連団体、トーナメントが様々な対策を発表している。
本記事では英米のゴルフ関連団体の緊急対応・対策をまとめてみたい。

現時点で英国では、イングランド、ウェールズ、北アイルランドのゴルフコースは、パンデミック対策で政府の措置に従って閉鎖されている。したがって、対策は閉鎖を前提としてコースをどう維持し、終息後にどのように復帰させるかがポイントになっている。

米国では、感染者の発生から政府の要請に従って市や州などが一時的あるいは無期限のクローズを決定している。ニューヨーク市やカリフォルニア州、フロリダ州など、あるいはカジノ関連のコースなども閉鎖になっている。オーガスタナショナルを含むいくつかのプライベートコースは自主的にクローズが行われている。
その一方で、公共のゴルフ場はウオーキング・散歩などに利用される例も多いようだ。

欧州ではイタリア、オランダ、ベルギーなどがゴルフコース、クラブハウス、ゴルフ練習場などをクローズしている。フランスも15日間の封鎖を行っている。(各国の状況は、情報を確認して追記するかもしれません)

■R&A

R&Aは3/20の記事でコロナウイルス発生が継続する場合の措置についてガイダンスとルールが示されている

このガイダンスでは、
・スコアカードの取り扱いについて、マーカーではなく自分で記入OK、マーカーは口頭でスコアを伝える。
 確認可能な場合はスコアカードを提出しなくて良い。
・ピンについて、プレーヤーがピンを刺したままプレーを望む場合やピンなしでのプレーについて規定。
・ホールカップの定義について
・バンカーではレーキなしの場合の裁定
が紹介されている。

■PGA(英国)

英国PGAは「COVID-19 Resource Hub」という名称の特設ページを設けている。
<ホットライン>
3/26には所属する8000人以上のプロゴルファーたちのサポートと助言のためにホットラインを立ち上げている。
<財政支援>
各種の財政支援を掲載
<ゴルフコース支援>
ゴルフ場運絵のためのガイドラインを掲載。
グリーンキーパーを健康に保つためのヒント、ゴルフコースの臨時閉鎖(ロックダウン)のための準備、不安を抱える者たちへの助言などのページが設けられている。このページのコース管理情報はBIGGAのぺージへのリンクになっている。

それに加えて
<ゴルフ関係機関へのリンク>
イングランド、アイルランド、スコットランド、ウエールズのゴルフ機関へのリンク
<保健関係機関へのリンク>
WHO、NHS、HSE
<国際会員のためのリンク>
<アーガイブ>
ゴルフ場業界へのガイドライン
草の根ゴルフ
ゴルフ指導とCOVID-19に関するガイダンス
 という内容になっている

●グリーンキーパーを健康に保つためのヒント
この中から、グリーンキーパー(=コース管理スタッフ)を健康に保つためのヒントを見ると、
10 tips to keep greenkeepers healthy during the coronavirus crisis(コロナウイルス危機期間中にグリーンキーパーの健康を保つ10のヒント)
BIGGA(3/16記事)がある。この内容を概観してみよう。

1)リスク回避のため管理スタッフをいくつかのチームに分割して、互いに隔離する。別のグループのメンバーと話す際にはスマホなどを使う。キーパーはスタッフと離れる。
2)グループごとに休憩時間と昼食時間をずらす。食べ物を別々に保管する。休憩後には休憩室を清掃する。
3)クルマの中で昼食を摂るように勧める。集まる機会を減らす。コース管理スタッフは多くの時間を一人で作業しているが、ランチや休憩で集合すると感染の絶好の機会になってしまう。
4)衛生状態を維持する。20秒以上手を洗う。使用するすべての機器を掃除・殺菌する。共有エリア、洗面所、オフィスなどを定期的に清掃する。
5)定期管理できない場合はコースを保護する資材などを利用する。結露防止剤などを利用する。
6)成長調節剤を利用して、芝の成長を遅らせ、刈込頻度を下げる。
7)IPMの考え方をできるだけ採用して病害虫の予防管理に務める
8)症状が疑われるスタッフを自宅待機とする。チーム全体に感染させない。
9)緊急時の計画をたて、「最悪」に備える。BIGGA他のサイトを利用する
10)その他(主にプレーヤーに向けて)
常にピンを穴に残し、手で抜かない。レーキは使わない(足でならす)、人のボールを拾わない・拭かない、クラブや距離計を共有しない、プレーヤー同士が2m以上離れる、ゲーム後に握手をしない、ケータリングを利用、使い捨ての皿とカップを使用し、すべてのテーブルで手洗い設備を利用できます、エントリー、予約、スコアリングのオンラインサービスを使う、非接触型の支払いサービスを使う。

■BIGGA 英国&国際グリーンキーパー協会

・英国&国際グリーンキーパー協会BIGGAの全スタッフは在宅ワーク中。問合せ窓口を開設。
・新型コロナウイルスに関するガイダンスページを開設している。

・この中の記事、COVID-19コロナウイルス危機:「”必須メンテナンス”とは何か?」
3/25記事の概要を紹介する。
https://www.bigga.org.uk/news-listing/covid-19-crisis-essential-maintenance-randa.html

イギリス政府のCOVID-19対策の期間中、ゴルフコースでは「必須」の管理のみが許可されている。
各クラブ、各グリーンキーパーがこれを様々に解釈しているため、R&AとBIGGAで、「必須」の内容を明確にするためこの記事を示した。

最重要なのは、スタッフとその家族の健康と安全です。
コース管理スタッフがウイルスにさらされないようにするための厳重な対策が講じられた安全な環境でのみ作業を行うこと。

封鎖期間が延長された場合でも、このガイダンスは引き続き有効。長期間続く場合、重要な作業の範囲が変更になる可能性がある。

英国のゴルフコースが終息後に回復可能な状態に保たれるよう、ガイダンスに従うことを推奨する。

COVID-19コロナウイルス危機:「”必須メンテナンス”とは何か?」

記事本体では、以下が紹介されている。

ゴルフ場の環境は一様ではないので、必要不可欠な管理は、個別に適合させることが必要とした上で、

●作業方法
コース管理スタッフの健康と福祉を第一に考慮しなければならない。全ゴルフ施設は、スタッフが危険にさらされないよう厳重な対策を実施すべき。
コース管理スタッフの作業時間は最小限にとどめ、その都度調整する。対策は、合意された必須の管理計画に合わせて実施する。

対策には以下が含まれるが、これらに限定されるものではない。
- 衛生距離の重視
- 職員が別々に仕事をする
- 作業員1人1人に個別の機械を割り当てる
- 現場に複数のスタッフがいる場合は、勤務時間や休憩時間をずらす
- 共用部分の使用を制限または禁止する
- ドア、ハンドル、燃料ポンプ、共用機械など、接触する表面を定期的に消毒する
- 1人で働く方針を確認する

●刈込み
グリーンは生育速度に合わせて週3回を上限に刈込む。病害の蔓延を防ぐため、刈込みをしない日は、必要に応じて露の除去を検討する。

ティーとグリーン周囲は、成長の度合いに応じて、週に1回を限度として刈込む。

フェアウェイは、成長速度に応じて、週に1回を上限として刈込む。
ラフなどは必要に応じて2週間に1度に刈込む。
プレーしているラフだけを刈込み、
ボールに行かない場所は自然に戻すことも検討する。
刈高は、その場所固有だが、芝のストレスを最小限に抑える。
これらの作業で均一性、密度、テクスチャー、芝の健康を維持して、サーフェスを迅速にプレーを再開し、適切なプレー基準に戻ることのできるようにしておく。

●灌漑と栄養
灌漑や施肥は必要に応じて行う。
目的をもって芝を管理する。散水と施肥のどちらかの投入量が過剰にならないように注意。不必要な成長を促進し、より多くのメンテナンスを必要とすることになる。

●機械設備のメンテナンス
必要に応じて実施し、必要な機器が安全に保たれていることを確認する。

バンカー、ペナルティエリア、広い練習施設(グリーン以外)の整備などの業務とティー、エアレーション、目土、散布は現時点では必須ではないと考えられるが、対策が必要な病害・害虫・雑草を防除するため時々農薬散布が必要と考えられる。

■STRI 英国スポーツターフ研究所

英国のSTRI(スポーツターフ研究所)は、3/20に「コロナウイルス発生時のゴルフコース専門家へのアドバイス」の記事を出している。
この記事では、
・コロナウイルスの影響はコースの財務に影響すること
・予算軽減のために毎日の管理は最小限になること
<日々の管理>
・日々の管理の変更は難しい問題である
・スタッフを離して、作業を任せることを含めて対応
・コース方針を競技性ではなく安全な環境でゴルフを楽しむことにシフト
<刈込み>
・刈込みの軽減
・成長調節剤の使用
・FW、ラフエリアの見直し
・グリーン刈込頻度の低減と刈高UP
・プレーしないことでの損傷の減少
<芝生育>
・窒素施用量の削減のポイント
・刈高について
・夏の終りに通常営業に戻ることを想定して設定
<更新作業など>
・この時期に、改修を検討してはどうか?バンカー砂のリフレッシュ、コアリング、厚目土、WOSなど
・刈込まず放置した場合の不都合の確認
<改造や改修・補修>
・ティの改造(平坦化)、沈下した配管の修正、スプリンクラーの修正、踏圧の多い箇所の播種や張替えなど
・クラブハウススタッフを一時的にコース課に転属させる
などに触れている。

■USGA 米国ゴルフ協会

USGAからは3/20付で「COVID-19時代のルールとハンディキャップガイダンス」の記事が出ている。
内容では、ウイルスへの暴露の可能性を最小限にするために、ゴルファー、労働者、オーナーは、ピン、ボール、バンカーレーキ、ティー、カート、スコアカードなどの表面への接触に対する意識レベルを高める必要があると謳われ、接触を避けるためのガイダンスが示されている。

・追加のQ&Aでは、
ピンを抜かない状態でのプレーのためのルール
バンカーのバンカーレーキをなくした際のバンカー内のプレーについて
スコアカードの確認と提出方法
ホールアウトをしない、あるいは手でボールを取り上げないための措置
が記載されている。

ここでは、ボールをホールに入れないよう、ホールカップの縁が地表から5cmになるようにセットして、パットしたボールがホールカップに当たって跳ね返ることを、きちんとスコアとしてカウントするように規則を一時的に修正している。

■マスターズ2020

四大ゴルフトーナメントの動向も概観しておこう。

・オーガスタナショナルゴルフクラブの会長フレッド・リドリーは、3/13記事で、3/4時点では開催予定だったマスターズトーナメント、オーガスタナショナルウィメンズアマチュア、ドライブ、チップ、パットナショナルファイナルを延期したと述べている。開催日は不明。

■The Open全英オープンゴルフ

3/19の時点でStatement from the R&A on Covid-19の記事が出ている
・状況が刻々と変わることを考慮しつつ、政府や保険当局、医療コンサルタントからの助言を受け入れる。R&AスチューデントツアーシリーズファイナルとR&AガールズU16アマチュアチャンピオンシップをキャンセル。
・ロイヤルセントジョージズでの149th全英オープンとロイヤルトルーンでのAIGウィメンズブリティッシュオープンについては評価中であるとのこと。

■PGAチャンピオンシップ(全米プロ)

US PGAツアーはHP3/17記事で5/11-5/17、サンフランシスコのTPCハーディングパークで開催予定のPGAチャンピオンシップを延期。夏の開催を検討。
(現在TPCハーディングパークは営業停止中)

■USオープン

・USGAの公式ツイッターは3/28付でUSGAは、コロナウイルスパンデミックの絶え間ない状況変化を考慮して、4月27日の週まで、USアマチュア、US女性アマチュア、USジュニアアマチュア、およびUSガールズジュニアのエントリーを延期。
・ニューヨークのウイングドフットGCでのUSオープン、チャンピオンズGCでの全米女子オープンは、2020年の予選をキャンセル。試合日程そのものは従来のまま維持されている。

なお、3/27には夏の終わり頃に延期の方向であることが報じられている。
また、感染症例が多いウイングドフットのあるウエストチェスター周辺よりも安全であるとして、オークモントGCでの開催も検討されているようだ。

以上、米国・英国の新型コロナウイルスの影響について各種ゴルフ関連団体の動きを概観した。
弊社では、この春、2/5-2/6に予定していた第24回芝草セミナーを延期した。その時点での開催延期は微妙なところもあったが、その後の感染拡大とそれがもたらす影響を考えると、開催延期は正しい判断だったと思わざるを得ない。
現在は、新型コロナウイルス感染拡大の一刻も早い終息を願うばかりである。
本記事が参考になれば幸いである。(秋篠)

(4/2追記)
ゴルフマーケットNEWSのサイトで「ゴルフマネジメント」誌の元編集長の喜田氏が「3分で読める コロナウイルス【COVID-19】最新情報」の記事()を発信している。
こちらも重要情報が掲載されているので、ぜひご一読されたい。